自分の撮り方をみつめる -「被写体」と「光」の捉え方

2016.01.15

ryoko

はじめまして。2016年からライターをさせていただくryoko @ryoko_______ です。今回は自身の写真をみつめながら、「被写体」と「光」の捉え方についてお話したいと思います。

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カメラには小さい頃から興味がありました。父の書斎からこっそりフィルム一眼レフカメラを持ち出して触っていたのですが、ファインダーを覗いてピントを合わせるのが楽しいとか、シャッターを切るときの「カシャン」という音が好きだとか、そんな理由だった気がします。

大人になってカメラ雑誌や写真集の編集をするようになり、多くの写真家の方々とお話させていただくと、写真に対する想いはより一層強くなりました。

反面、自分自身の作品を撮ることはなく、散歩中に何気なく風景を撮ってみても「後で見返したいものでもないし、残しておきたいものじゃないから」と現像しないこともままありました。

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いま、自分の写真は「記憶の標本」だと思っています。

自分の人生の「いい」と思った瞬間を、虫ピンでひとつひとつ留めていくような感覚でしょうか。人物を撮影するにしても、「その人を撮ろう」というよりは、「その人も撮ろう」という気持ちなんです。

その人と自分のいる空間全体を、見ている。

ファインダーを覗く前に「いい」と感じた空気を写したいと念じてはいますが、テクニックを駆使したりシチュエーションを狙ったりしているわけではないので、私にとっての撮影は「祈り」に近いのかもしれません。

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被写体の捉え方

私がカメラを向けるひとつのポイントは「覚えておきたい」と感じるもの。たとえ時間が流れ、記憶が曖昧になり、この日のことを忘れてしまったとしても、「いまこの瞬間、この風景を見たときの気持ちだけは覚えていよう」という強い想いが、私の「写真を撮る」という行為に繋がっています。

そして、ファインダーを覗きながら被写体に近づいたり、逆に距離を置いてみたりする。そうすることで見えてくる、被写体と自分との間にあるストーリーを写すような感覚です。

また、被写体を見たときの瞬間的な印象を大切にしているので、常に自分の目の高さで撮っています。そうすると、写した写真に自分の存在を感じる気がするんです。

視点を変えるテクニックとして、地面にカメラを置いたり、腕をグッとあげて俯瞰的に撮る……といった方法もありますが、私は写真に自分の痕跡のようなものを残したいのかもしれません。

光の捉え方

写真を撮る際、「光」はとても重要だと思っています。同じものを撮影しても「光」の種類によって印象が全く異なってくるんです。

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たっぷりと光が入る窓の下は、被写体の陰影を強く、印象的に見せてくれます。また、窓から一歩離れた場所で撮影すると、壁や天井に拡散した光が穏やかな印象を作りながらも、被写体の質感はしっかりと描写してくれます。

被写体が静かに佇んでいるように見え、物が語りかけてくるような「気配」を感じることができるんです。

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自然光ひとつとっても、曇り空の光だと影ができずやらわかい印象に、雲ひとつない空の光だと影が強調された堅い印象になります。
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私の場合、「木漏れ日」など、光の美しさを表現したいときには、「人物の表情が写るよう露出をプラスにする」といった調節はせず、あえて「影」を写すことが多いですね。これも、「その人と自分のいる空間全体を見ている」からかもしれません。

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また、日の出前や日の入り直後の淡い光の空も好きです。美しい光の余韻が感じられ、写真をノスタルジックな雰囲気に仕上げてくれます。

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光の向きが正面、真横、斜めなどで状況が変われば、それぞれ異なる表情が生まれます。何が正解ということはなく、「被写体との関係」や「好きな光」をみつめ続けることが、「写真表現」の手がかりになるかもしれません。

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ryoko
Photo & Text by 

ライター、編集者。
カルチャー、ライフスタイル誌にて
執筆や編集を行う。