目に見えないものを撮る
2015.02.08”心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。かんじんなことは、目に見えないんだよ”
アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ『星の王子さま』
わたしの初めての記事では「目に見えないもの」についてお話しさせていただきます。
冒頭の言葉は、長年読まれ続けている『星の王子さま』のなかに出てくるキツネと王子の会話の一部です。皆さんもどこかで耳にしたことのある言葉なのではないでしょうか。
写真を撮っていると、今まで周囲の変化に目を向けていなかったことに気が付きます。季節の移ろい、空の色が変わる美しさ、暦の意味。いつだってわたしたちの周りは絶えず変化しているのに、目を向けることを忘れてしまっていませんか。
変わっていないつもりのわたしたちでさえ、めまぐるしく新しい細胞が生まれ、古い細胞と入れ替わります。ちなみに、およそ3か月でわたしたちの体のすべての細胞が新しい細胞と入れ替わるみたいです。3か月前のあなたを思い浮かべてみてください。細胞レベルでは生まれ変わっているはず。あなた自身の中に生まれ変わるような変化はありましたか。
発酵食品についても、すこしだけ触れさせていただきますね。
わたしのだいすきなお酒も目に見えない小さな小さな生き物たちが果物や穀物から得られる糖をアルコールに変化させています。そんなお酒や発酵食品の歴史も、想像できないほど古く、わたしたちの祖先と微生物たちの付き合いは長いと考えられています。
先祖たちが目に見えない大切なものを守り続けてきた、その恩恵がいまの日本の食文化の豊かさをもたらしているのだと思います。
これまで挙げたような目に見えないものは、他にもわたしたちの身の周りにはたくさん存在しています。
写真もそのうちのひとつで、写真に写るものは目に見えるものだけではない、とわたしは思います。
人を撮るとき、その人に対する想いやその人との距離感が写ります。どちらも目に見えないものですが、確実にわたしたちが感じているもの。ふと思い返してみると、わたしは写真を撮るとき、そんな目に見えないものを見ている気がするのです。
その場の雰囲気、空気の温度、被写体との距離、その人への想い。目には見えないけれど、確かに目の前にあるもの。
そんなものを追いかけては、気づかぬうちにシャッターを切ってしまう。
きっと使っているカメラの種類や技術だけでは手の届かないところ。
目に見えないものを撮りに行きませんか。
kanae kato
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