写真愛好家でも出来ること

2018.10.26

kunihito miki

こんにちはkunihito miki @kunihito.miki です。

皆さんが趣味にハマったきっかけは何でしょう?私には3つの趣味があり、共通して「盛大な勘違い」をきっかけに趣味へ没頭してきました。

①高校時代から続く音楽活動は、鏡に写った楽器を持つ自分を見て「あっ、これ絶対モテる♪」と勘違い。

②十九の春に跨ったオートバイは、こいつと一緒ならどこにでも行けると思い込み、今ではスーパーカブで東北一周の旅を計画中。

③そして今 最も夢中になっている写真は、デジタル一眼を買った初日に撮れた奇跡の一枚が「オレ天才かも~!」と超盛大な勘違いを招き現在に至っています。

写真をされてる方にこのパターンは結構多いらしく、私の場合この勘違いに10年経っても気付かないものだから、この先も勘違いに気付かないまま人生を終える方が幸せなのかもしれません。


趣味の写真から

さて、仕事もそこそこに楽しみ、休日は3つの趣味に没頭してますと アッという間に年月が過ぎて私も”おじさん”になりました。実家に帰りふと横を見ると母はすっかり”おばあさん”になっていたんですね。

その時、月並みだけれど写真が趣味なのだから 母が元気なうちに「遺影」を撮影しておこうと思い立ちます。これって親孝行なのかなぁ、いやいや本音を言うと、ついでにスタジオ撮影ってやつを経験したかったという少し不謹慎な理由もあるのです。


思い立ったらとにかく実行!というわけで 早速お借りしたスタジオは、写真家nandin氏がオーナーのStudio Bridge です。道頓堀川に面したビルの5階にあり、3方が大きなガラス窓で美しい自然光が入るスタジオです。

あ、この人が母の「文子さん」150cmの小さな体で4人の子供を育て(私は末っ子)過去に大病を患ったものの80歳を越えた今でも超元気です。とにかくよく喋る(笑)


さぁ撮影準備

その前に、この記事にあるヨコ長の写真は「写ルンです」で撮ったもの。家を出るところ→スタジオの撮影風景→実家でプリントを渡すところまで、その日のドキュメントをアナログで残したかったのです。

実を言うと本番の遺影撮影も「写ルンです」で撮りまくりたいのですが、母から 「この子とうとう頭おかしくなってる・・」 と心配されたら困るので、 ” 本気出してる感 ” を醸し出すため、超久しぶりに中版カメラでの撮影に挑みます。

フィルムは奮発してコダックのポートラですよ。なんと1本/1100円!5年前より2倍以上も値上げ。現像費を合わせると1回シャッター切るごとに200円が「チャリ~ン」と音を立て消費されるとは これぞフィルム世紀末 !!

次の給料日まで妻子にはスナックパンだけで食い繋いでもらおうか、、なんてセコイ計算している 私に良い写真が撮れるのでしょうか??

心落ち着けて慎重に準備しましょう。室内自然光の露出だと、絞りF8対してシャッタースピードが1/15~1/30と手持ち撮影は厳しい環境。無理せずにカメラは三脚にセットしました。だって1ショット200円だもの・・ってまだ言ってる(笑)


早速ファインダー覗きながら1枚、2枚と撮ってみますと文子さんがまるで地蔵のようにカチカチです。でっかいカメラを向けられると誰だって緊張しますよねぇ。3枚目からは作戦を変更しまして「ピント」と「構図」を固定したまま ファインダーを覗かずに 会話をしながらシャッター切り始めました。

お~いい感じに緊張ほぐれてきましたね、でも遺影だからちょっと笑い過ぎかなぁ、、でも その感じ その感じ。

いやいや、コレ笑い過ぎでしょ、フレームから飛び出してますよ文子さ~ん!!

こんな感じでケラケラと笑いながら約2時間を使い 6シーンの撮影で押したシャッターは合計48回でした(もう計算はしまい・・)。 コミュニケーションを取りながら良い表情を引き出す。ポートレートは本当に難しいですね、普段スナップしか撮らない私にはとても良い勉強になりました。

で、納得いく遺影写真が撮れたのか?
はい。奇跡的に「これだ!」と思える写真が一枚だけ撮れていました。ご覧になりたい方は 葬儀まで!って冗談ですよ、バチがあたりそうなので公開は控えましょう。


遺影を撮って想ったこと

近しい人の遺影を撮ることは将来必ずやってくる 「死」 をぼんやり認識させられるのと同時に、「その人との今後」を改めて考えるきっかけになりました。私の場合、この先 母に何回会えるのだろう?と不謹慎にも計算しちゃいましたね。

普段会えるのは月に1~2回なので、平均1.5回
1.5回 × 12か月 × (平均寿命までの年数は5年) = 90回

コレちょっとびっくり。今後 顔を見て話せる回数が100回もないなんて、親と過ごせる時間は 私や皆さんが思っているよりずーと少ないのかもしれないですね。

じゃぁ、一緒に温泉にでも行く?!なんて言いたいところですが、いざ私も子を持ち、逆に親という立場になってみると、そーゆうのは全然欲しくなかったりするわけです。

温泉旅行やプレゼントなんかより
子供が美味そうにご飯を食べている顔や、必死になって好きなことに打ち込んでいる姿を “見守れること” が 他の何よりもうれしいのです。

幸せなんて実はささやか

残り何回会えるか もう数えませんが、これからも一緒にご飯を食べて、たくさん話し、たくさん笑いましょう。


最後に

私は写真家でもフォトグラファーでもない、ごくごく普通の会社員です。私を含め写真を趣味にしているほとんどの人達がキラキラした世界からは縁遠く、地味に思えるほど平凡な日常を送りながら 好きな写真を撮っているのでしょう。

記事の題名にある「写真愛好家が出来ること」を最後にカッコよくまとめる予定でしたが・・書き進めるうちに、感動で心震わせる名文も書けないし、そんな必要もないんじゃないかと気付きました。

写真愛好家が出来ることは 純粋に写真を愛し、被写体を想い、優しくシャッターを切ること。

そして 大切なのは 長く続けること。稀に喜こばれることがあるからです。


後日、プリントを持って実家に行きました。母はプリントを見ながら「コレがいいなぁ」と笑ってくれました。

素晴らしい人生を与えてくれた母へ 感謝を込めて この記事を寄稿します。

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