切り取るココロ?

2015.01.16

Naoko Uchida

どんな瞬間、みなさんはシャッターを押したくなる?

心動かされているからこそ、その瞬間そこでシャッターを切っていますよね。その心っていうのはみんなそれぞれだし、だからこそ写真を見ていて面白いし惹かれる。「共感できるからステキ」「なんだこの面白い視点は」「見てるだけでワクワクする」…どう感じるかもひとそれぞれ。

RECOで記事を書かせていただいているこの機会に、私のココロをちょっとだけ書いてみます。

地中海に沈む真っ赤な夕日を見て育った幼少期。北アフリカのアルジェリアという辺境の地でとても閉鎖的で不便で危険を身近に感じながら生活をしていました。それでも遠足となるとサハラ砂漠へリュックを背負って行き黄金色の砂に火傷しそうになりながら転がり回って。そして自分とは全く異なる種類の顔をして聞き慣れない言葉を使う不穏な笑顔を浮かべる人たちと挨拶を交わし、市場へ行くとそこは生と死とが混在した臭気と熱気で溢れかえっていました。

そんなアフリカでの生活は私の小さな好奇心を大きく大きく刺激してくれました。また、そこからフランスのパリにも頻繁に長期滞在し、美しい街並を見上げながら芸術の都を歩き回っていました。美しい街並といっても後からつけたようなもので、その当時の私が何より好きだったのは至る所に置かれていたメリーゴーランド遊びです。

アジア人への偏見や差別がまだ強かった頃でしたが、その中では言葉は片言でも子供同士すぐに友達になってちょっかいを出し合って。あの時遊んだ子たちも私のことを少しでも思い出してくれてると嬉しいな。

冬になればスイスの雪山へスキー教室に参加しに行っていました。でもこれは私の大嫌いな行事で、滑り落ちるのが怖くていつも逃げ出して雪原を大脱走。その姿をロッジにいた両親に見つかり連れ戻される…の繰り返し。本当にやんちゃで頑固な子供だったな。

そんな風にちょっと日本にいたら考えられないような非日常が日常にあった5年間は私の好奇心や輪郭をかたどってきたと思っています。

帰国してからは日本の生活に慣れるのがすごく難しかったのを覚えています。なかなか居心地のいい場所が見つけられないような感じで宙ぶらりんな時期があって。その中でやっと見つけた居場所みたいなところは母の故郷の秋田でした。

青森と岩手の県境に近い大館で過ごす夏休みの一ヶ月が一年のうちで何より楽しみでした。毎朝5時に近所の子が迎えにきてくれてラジオ体操へ行き、帰ると畑で採れたトウモロコシが茹で上っていてみんなで噛りついて食べる早さを競ったり。田んぼのあぜ道を走り抜けてスズメたちを追い払ったり、秋田杉の間伐を手伝ったり。

駄菓子屋のおばあちゃんの方言が強くて会話は成り立たないけれど毎日通って当たりくじ探したな。カブトムシは勝手に家の中に入ってくるし、飼われている犬たちは群れを成して本気で追いかけ回してくる。動物も昆虫もみんな等しく存在を主張していて私もその中の一員に過ぎない、それが日常、そしてそんな環境が私のふるさとです。今でも思い出すとあの恵まれた日々に胸が熱くなっちゃいます。

シャッターを押したくなる瞬間。私の場合は、大切に守っていきたい私なりの日常にある温もりみたいなものを見つけた瞬間なのかもしれません。私にしか切り取れない、そんなものを写せていけたらいいな。

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なんだか、無性に旅に出たくなってきちゃった。

ciao♥

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Naoko Uchida
Photo & Text by